症例 · 矯正歯科
口ゴボだけではなかった症例|片側がかまない・過蓋咬合・下がった奥歯を、抜歯矯正とアンカースクリューで
口元の突出(口ゴボ)を治したいと来院された20代の男性でしたが、診てみると右側がまったくかんでいない、奥歯が下がってきている(挺出)、過蓋咬合、むし歯、すでに失った歯まで、いくつもの問題が隠れていました。前歯を下げるだけでは済まないため、抜歯矯正とアンカースクリューで、かみ合わせと口元を一緒に治しました。
症例のまとめ
- お悩み:口元が前に出て見える(20代男性)
- 診断:口元の突出(上下の前歯が前に傾き、小さな下あごが突出を強調)。右上の第一大臼歯が下がってきて(挺出)右側がかまず、下あごを左へずらしてかんでいる。過蓋咬合。右下の第一大臼歯に重いむし歯、左下の第二小臼歯はすでに欠損
- 抜歯:上の左右の第一小臼歯、むし歯が重い右下の第一大臼歯(通常の小臼歯の代わり)。左下はすでに欠損しているため追加の抜歯なし
- 治療:アンカースクリューで挺出した奥歯を骨の中へ押し戻す(圧下)→ 抜歯スペースで前歯を後ろへ
- 治療計画時の予定期間:約20〜24か月(予定)

奥歯が「挺出」すると、なぜかみ合わせがずれるのですか?
かみ合う相手の歯がなかったり、うまくかめていなかったりすると、歯は反対側へ伸びるように動いてきます。これを挺出といいます。この方は右下の奥歯がむし歯で低くなっていたため、右上の第一大臼歯が早く下がってきていました。
下がった奥歯が口を閉じるときに先に当たるため、自然と下あごを左へずらしてかむようになっていました。顎関節に大きな異常はありませんでしたが、この状態が長く続くと顎関節の不調につながるおそれもあります。


口ゴボと過蓋咬合はどうでしたか?
横から見ると、上下の前歯が前に傾いて口元が出ていました。側面レントゲンで分析すると、口元の突出はたしかにありましたが、下あごが小さいため、実際以上に突出が強調されて見えることも分かりました。精密検査をしないと分からない、計画に大事な情報です。
さらに、上下の前歯のかみ合わせが深すぎる過蓋咬合もありました。目立つ問題に隠れて見落とされやすいのですが、一緒に治す必要があります。


どのような治療計画にしましたか?
- 上の左右の第一小臼歯を抜歯:前歯を後ろへ下げるスペース
- 右下の第一大臼歯を抜歯:むし歯が重く残せないため、通常の小臼歯の代わりに
- 左下:すでに第二小臼歯がないため追加の抜歯なし(上2本・下1本の抜歯+既存の欠損1か所=4か所のスペースを活用)
- アンカースクリューを2本(外側と内側)入れ、挺出した奥歯を骨の中へ押し戻す
- 反対側には一時的にかみ合わせを高くするバイトプレーンをつけ、奥歯を動かすときに下の歯とぶつからないようにする
治療中はどのように進みましたか?
最初に取りかかったのは、下がってきた右上の奥歯を元の高さへ押し戻すこと(圧下)です。この奥歯が下がったままでは、右側のかみ合わせは決して正常になりません。圧下は矯正でもっとも難しい歯の動きのひとつで、アンカースクリューがなければ、ここまで動かすのは非常に難しかったと思います。
同時に、欠損部の隣で倒れていた左下の歯を起こしました。圧下が進んでかみ合わせの面がほぼ平らになってから、抜歯スペースを使って前に出ていた上の前歯を後ろへ下げ、外側に出ていた奥歯も内側へ戻しました。


治療の結果は?
歯並びが整い、いちばん気にされていた口元の突出も改善し、横顔が大きく変わりました。何より大切なのは、右側がきちんとかめるようになったことです。下あごをずらしてかむ必要がなくなり、過蓋咬合も正常な深さに戻りました。
私が振り返って思うのは、ご本人が気づいている問題がすべてではないということ、そして矯正の本質は「かみ合わせ」だということです。前歯を下げるだけの矯正であれば、右側はかまないまま、あごもずれたままだったでしょう。費用は装置と期間によって変わるため、検査後にご案内します。

よくある質問
奥歯が下がってきているか、自分で分かりますか?
分かりにくいことが多いです。片側でかみにくい、あごをずらしてかんでいる気がする場合は、検査で確認してください。
抜歯する歯は、いつも小臼歯ですか?
多くは小臼歯ですが、この方のようにむし歯が重い歯がある場合は、その歯を選ぶことがあります。
顎関節に影響はありますか?
かみ合わせのずれが長く続くと、顎関節の不調につながることがあります。この方は大きな異常はありませんでした。
治療後の注意点は?
保定装置(リテーナー)を指示どおりに使い、むし歯の治療や定期検診も続けることが大切です。
監修者
キム・ソンミン(金善敏) セラミック歯科 代表院長
矯正歯科専門医(韓国保健福祉部)、東京医科歯科大学 博士、日本矯正歯科学会 正会員。日本語でのご相談は院長が直接担当します。
ご注意
※ 実際の治療症例です。治療の結果、期間、通院回数には個人差があります。
※ 矯正治療中は、一時的な痛みや違和感、歯ぐきの下がり、歯根吸収が起こることがあります。治療後に保定装置(リテーナー)を使わないと後戻りすることがあります。アンカースクリュー(ミニスクリュー)は、周りの炎症や脱落が起こることがあります。
※ 写真は歯とレントゲンの部分のみ、患者さまの同意を得て掲載しています。
