症例 · 矯正歯科
受け口(反対咬合)を手術なしで矯正した30代女性の症例|上あごの拡大とアンカースクリュー
「受け口は手術しないと治らない」と思っている方は多いですが、精密に診断すると、手術なしで十分に改善できるケースも見つかります。この症例は、以前に手術が必要だと説明を受けたことのある30代前半の女性です。上あごを広げて前歯を前へ、アンカースクリューで下の歯列を後ろへと、上下両方から動かして、約1.5年で反対咬合を治しました。
症例のまとめ
- お悩み:受け口と反対咬合(30代前半女性)
- 診断:骨格性の下顎前突(受け口)、前歯の反対咬合で深くかんでいる、上あごの発育不足、側切歯が内側に入り歯を並べる場所が足りない
- 治療:①上あごに拡大装置(PBP:かみ合わせを高くして前歯の引っかかりを外す装置)→ ②下にアンカースクリューを入れて下の歯列全体を後ろへ
- 治療期間:約1.5年
- 結果:正常なかみ合わせになり、横顔の下あごの突出感も減少

受け口(反対咬合)とは?
受け口は医学的には下顎前突といい、下あごが上あごより前に出ている状態です。前歯のかみ合わせが逆になる(反対咬合)ことが多く、見た目だけでなく、かむ機能や発音にも影響し、心理的な負担になることもあります。
一般に重い受け口は手術(両顎の手術)が必要とされますが、精密な診断で、手術なしで改善できるケースを見つけることができます。

この方の受け口は、どんな状態でしたか?
前歯は反対咬合で、しかもかみ合わせが深い状態でした。横顔では下あごの突出がはっきり見えました。上の歯列を見ると、側切歯が内側に入り込み、犬歯が前に出ていて、上あごが歯を並べるには小さいことが分かりました。
つまり、骨格性の受け口に、上あごの発育不足と歯を並べる場所の不足が重なっていた状態です。この方は以前に手術が必要と説明を受けていましたが、私は手術なしでも十分によい結果が出せると判断しました。

手術なしで、どうやって治したのですか?
- 1段階:上あごに拡大装置(PBP)をつけ、上の歯列を横へ広げる。同時にかみ合わせを高くして、逆にかんでいる前歯の引っかかりを外す
- 前歯と犬歯のあいだを広げて、内側に入っていた側切歯の場所を作る。後ろの重い奥歯が支えになるため、場所ができると前歯は自然に唇側へ出てくる
- 2段階:下あごにアンカースクリュー(ミニスクリュー)を入れ、スプリングやチェーンで下の歯列全体を少しずつ後ろへ
上の前歯は前へ、下の歯列は後ろへ。上下両方から動かすことで、片方だけを動かすよりも大きく上下の関係を改善できます。


治療の結果は?
反対咬合は解消し、上の前歯が下の前歯を少し覆う正常なかみ合わせになりました。内側に入っていた側切歯も並び、下の歯列のすき間もきれいに閉じています。横顔でも下あごの突出感が減りました。骨そのものを動かす手術とは変化の量が違いますが、矯正だけで満足できる改善が得られるケースがあることが大切なポイントです。
治療のはじめ、上あごを広げている頃は、ご本人も「本当に治るのかな」と半信半疑でした。前歯がかみ合わせを越えて、奥歯の高さを上げていた材料を外した日に、いちばん喜ばれていたのを覚えています。

手術が必要な受け口との違いは?
すべての受け口が手術なしで治るわけではありません。骨格のずれが大きい場合や、顔の形そのものを大きく変えたい場合は、手術が必要なことがあります。手術にはあごの骨の大きさを変えられる利点がある一方、全身麻酔や入院などの負担もあります。ご自分のケースでどこまで変えられるかを、検査結果をもとに相談して決めることをおすすめします。費用は装置と期間によって変わるため、検査後にご案内します。
よくある質問
受け口は大人になってからでも矯正できますか?
できます。この方も30代で治療しました。骨格の程度によって、手術なしで治せるかどうかが変わります。
手術なしだと、顔はどのくらい変わりますか?
かみ合わせが治ることで横顔の印象は変わりますが、骨の大きさを変える手術ほどの変化ではありません。
治療期間はどのくらいですか?
この症例は約1.5年でした。状態によって変わります。
手術が必要と言われたことがあります。相談できますか?
はい。検査資料をもとに、手術なしでどこまで改善できるかをご説明します。
監修者
キム・ソンミン(金善敏) セラミック歯科 代表院長
矯正歯科専門医(韓国保健福祉部)、東京医科歯科大学 博士、日本矯正歯科学会 正会員。日本語でのご相談は院長が直接担当します。
ご注意
※ 実際の治療症例です。治療の結果、期間、通院回数には個人差があります。
※ 矯正治療中は、一時的な痛みや違和感、歯ぐきの下がり、歯根吸収が起こることがあります。治療後に保定装置(リテーナー)を使わないと後戻りすることがあります。アンカースクリュー(ミニスクリュー)は、周りの炎症や脱落が起こることがあります。
※ 写真は歯とレントゲンの部分のみ、患者さまの同意を得て掲載しています。
